
前回は、コミュニティリーダーの役割が「場をつくる人」から「文脈を編む人」へと変化していることをお話しました。今回は視点を変えて、コミュニティに「参加する側」の体験がAIでどう変わっているのかを掘り下げてみます。
■ 「ROM専」という習慣が、静かに変わりつつある
オンラインコミュニティには長らく、"ROM専"(Read Only Member)という存在がいました。情報は受け取るけれど自分からは発信しない――というスタイルで、関わり方のひとつとして普通に存在していた形です。
ところが最近、Creator ConnectやACLCのコミュニティで話を聞いていると、「初めて投稿した」「イベントで初めて発言した」という声が以前より増えているように感じます。そのきっかけとして何度か耳にするのが、「AIに相談して背中を押してもらった」という話です。
■ AIが下げる「はじめの一歩」のハードル
コミュニティに参加しても、最初の発信には心理的なハードルがあります。「何を書けばいいか分からない」「場違いなことを言ってしまわないか」「ベテランが多そうで萎縮する」──こうした感覚を持ったことがある方は多いのではないでしょうか。
コミュニティ参加「あるある」:入ったのに、最初の一言が出てこない
プロフィールを登録して、チャンネルを覗いてみる。でも、いざ投稿しようとすると手が止まる。「この場のトーンに合っているか?」「長すぎないか」と考えているうちに別のタブを開いて、そのまま……。このループを何周もした末に、ROMのまま数ヶ月が過ぎた、という経験はないでしょうか。
これまでの対処法:過去の投稿を参考にしながらなんとか書く
他のメンバーの自己紹介をさかのぼって参考にしたり、仲のいい知人に「こんな感じでおかしくないかな?」と確認してから投稿したり。小さな準備を重ねていた方も多いはずです。
生成AIだとこう使える:「文章の壁打ち相手」を即座に呼び出す
AIに「このコミュニティの雰囲気に合った自己紹介を一緒に考えてほしい」と伝えると、叩き台をすぐ出してもらえます。大事なのは、自分のバックグラウンドやコミュニティに入った理由を簡単に渡すこと。そうするだけで「汎用的な文章」ではなく、自分らしさが滲んだ叩き台が返ってきます。
💡 今日から使えるプロンプト例:「はじめましての投稿」を壁打ちする
私はこれから[コミュニティ名]に自己紹介を投稿しようとしています。
コミュニティの概要:[URL]
以下の情報をもとに、コミュニティの雰囲気に馴染みやすい投稿の叩き台を3パターン作ってください。
・私のバックグラウンド:[職種・経験・得意なこと]
・コミュニティに入ったきっかけ:[理由]
・この場でやってみたいこと・聞いてみたいこと:[具体的に]
トーンは[フランクに/丁寧に]お願いします。生成された文章をそのまま使うのではなく、「一番しっくりくるのはどれか」を選んで自分の言葉に直す──このひと手間が、AIとの上手な付き合い方です。
■ イベント後の「熱量の続かなさ」もAIで変わる
参加のハードルが下がると同時に変化しているのが、「イベント後の余韻の活かし方」です。良いイベントに参加した直後は「何かやろう」という気持ちになるのに、日常に戻ると気づけばその熱量が消えていた──これもよくある経験ではないでしょうか。
過去のイベント参加者の中には、「イベントを録音して、AIにメモを整理してもらい、自分に活かせるアクションを整理してもらった」という方もいました。人間の記憶は感情が高ぶっているときに定着しやすい。イベントが終わった直後に「自分にとってのアクション」をAIと言語化しておくことが、熱量を行動に変換する習慣として広がりつつあります。
■ リーダーが設計すべき「AIを前提とした参加導線」
こうした参加者側の変化を踏まえると、コミュニティ運営者にも新しい設計の視点が生まれます。「初投稿のひな型」をあらかじめコミュニティ内に置いておくことや、「投稿文を自動生成してレコメンドするBot」を提供すること──参加者がAIを自然に使える場づくりそのものが、運営者の仕事になっていく気がしています。
「参加しやすくする」だけでなく、「熱量が続く仕組みを設計する」こと。これが、AI時代のコミュニティリーダーに求められる次の一手ではないでしょうか。
次回は、オンラインとオフラインを組み合わせた体験設計がAIでどう変わるかを取り上げる予定です。引き続きご一緒に、新しいつながりの形を探っていきましょう。
【筆者プロフィール】
加藤 翼(Tsubasa Kato)
株式会社qutori CEO / 株式会社ロフトワーク シニアディレクター / BUFFコミュニティマネージャーの学校 創設代表
1990年千葉県柏市出身。「共創」をテーマにしたコミュニティディレクターとして、他分野のコミュニティを横断する事業を多数手がける。早稲田大学で哲学を専攻後、外資系コンサルなどを経て株式会社ロフトワークに入社。100BANCH / SHIBUYA QWS等の立ち上げに携わる。2017年 株式会社qutoriを創業。
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