
みなさん、こんにちは。Adobe Community Leaders Club(以下ACLC)をサポートしている加藤翼です。
前回は、生成AIがコミュニケーションの「摩擦」を減らし、個人の「好き」を熱狂へと変える触媒になっていることをお話ししました。今回はその先──「では、コミュニティを運営する側の役割はどう変わるのか?」を、現場で起きている変化から掘り下げてみたいと思います。
■ 「企画する人」から「文脈を編む人」へ
これまでコミュニティリーダーの仕事は、テーマを決め、登壇者を集め、当日の進行を整える──いわば「場をつくる」ことが中心でした。しかし生成AIの登場で、企画書、告知文、配信用のサムネイル素材といった制作物の多くは、数分で形になります。
そこで重みを増しているのが、「なぜいま、このテーマを扱うのか」という文脈の編集力です。先日のACLCリーダーミーティングでも、「AIが下書きをしてくれるからこそ、リーダーが選ぶ言葉や視点に、その人らしさが強く滲み出るようになった」という声が上がりました。AIが下絵を引いてくれるからこそ、その上に何を描くかという「視点」が問われている。これは運営者にとって、自由度が増すと同時に責任も大きくなる変化だと感じています。
本連載では今回から、毎回コラムの中でコミュニティ運営の現場でそのまま使える「ひとつのプロンプト」をご紹介していこうと思います。読んで終わりではなく、今日から試せるものを少しずつ手元に増やしていただけたら嬉しいです。第1弾は、いまお話しした"文脈を編む"ための一本から。
🔍 コミュニティ運営「あるある」:テーマは決まったけど、"なぜ今やるのか"が言葉にならない
イベントのテーマ自体はパッと浮かぶ。でも、いざ告知文を書こうとすると「なぜ今このテーマなのか」がうまく言語化できない──これはコミュニティ運営で本当によくある悩みです。結果として「〇〇について学びましょう!」のような当たり障りのない告知になり、参加者の心に刺さらない。
🔧 これまでの対処法:とにかく人に壁打ちする
従来は、運営メンバー同士で「なんでこれ今やるんだっけ?」と壁打ちしたり、過去の告知文を引っ張り出して参考にしたり。ただ、忙しい中でブレスト相手を捕まえるのも大変で、結局ひとりで悩んで時間だけが過ぎる……というパターンも少なくありませんでした。
✨ 生成AIだとこう使える:「壁打ちパートナー」を即座に召喚する
生成AIに「切り口」を指定してブレストさせると、数秒で複数の視点が網羅的に並びます。ポイントは、ただ「アイデアをください」と投げるのではなく、視点の軸を自分で設計すること。業界トレンド・参加者の課題・コミュニティ固有の文脈──この3軸を渡すだけで、出力の質が格段に上がります。
💡 今日から使えるプロンプト例:「なぜ今、このテーマか」を引き出す
あなたは私のコミュニティイベント企画のブレストパートナーです。
今度「[テーマ]」をテーマにイベントを企画しています。
「なぜ今このテーマを扱うのか」を、以下3つの切り口で3案ずつ提案してください。
① 業界・社会のトレンド
② 参加者が今まさに直面している課題
③ このコミュニティならではの文脈
各案は1〜2文で簡潔に。AIに案を出させた上で、最終的に「自分が一番ワクワクするのはどれか」で選ぶ──この往復運動が、文脈を編む筋トレになります。
📋 実際に入れてみるとこんな出力が返ってきます (テーマ:「生成AIとコミュニティ」/コミュニティ:ACLC で実行)
コミュニティイベントの企画、お疲れ様です!「生成AIとコミュニティ」というテーマ、まさに今多くの人が対話を求めている非常にタイムリーで魅力的なトピックですね。ブレストパートナーとして、ご指定の3つの切り口から「なぜ今このテーマなのか」を提案させていただきます。
① 業界・社会のトレンド
・誰もがクリエイターになれる時代の到来:生成AIによって創作のハードルが劇的に下がり、これまでツールに触れてこなかった新たな層がクリエイティブ・コミュニティに大量参入しているため。
・「作る」から「共有・共創する」文化へのシフト:完成品を見せ合うだけでなく、プロンプトやAIを活用したワークフローそのものをコミュニティ内で共有し、共にアップデートしていく動きが急増しているため。
AI時代における「熱量と共感」の価値向上:コンテンツがボタン一つで量産できるようになった今だからこそ、人間の熱量や共通の目的で結ばれるコミュニティの存在意義が社会全体で再認識されているため。
② 参加者が今まさに直面している課題
・コミュニティ内のルールと倫理ガイドラインの葛藤:コミュニティへの「AI生成作品」の投稿をどこまで許容し、どうタグ付け・評価すべきか、多くのリーダーがルールの線引きに頭を悩ませているため。
・AI代替への不安とメンバーのモチベーション管理:メンバーが「自分のスキルがAIに奪われるのでは」という不安を抱える中、リーダーとしてどうAIとの共存に導き、モチベーションを維持させるか模索しているため。
・運営リソースの枯渇と「人間味ある効率化」の壁:コミュニティ運営の負担(企画、要約、翻訳など)をAIで減らしたいが、コミュニティの「人間らしい温かみ」を失わずに自動化する絶妙なバランスが掴めていないため。
③ Adobe Community Leaders Clubならではの文脈
・Adobe Fireflyが切り拓く「安心・安全なAI」の啓蒙:著作権や商業利用に配慮されたFireflyの理念に共鳴するAdobeのコミュニティだからこそ、倫理的かつクリエイターをリスペクトするAI活用法を社会へ発信できるため。
・AI時代の「クリエイティブ・リーダーシップ」の体現:Adobeツールの進化と共に歩んできたリーダーたちが、「AIと人間の共創」の最前線に立ち、新たな時代のロールモデルを示す使命があるため。
・既存ワークフローの激変と知見のアップデート:Photoshop等に生成AIが深く統合されたことで、長年培ってきたプロのノウハウとAIをどう掛け合わせ、メンバーの成長に還元していくか、今まさに熱い議論が必要なため。ご覧の通り、案がパッと並びます。ここで大事なのは「全部使う」ことではなく、この中から自分が一番ピンときた1〜2案を選び、自分の言葉に翻訳し直すことです。AIは選択肢を広げる役、決めるのは自分。この距離感こそが、これからの運営者の視点を磨いてくれます。
■ AI時代に進化する「集まる場」のかたち
具体的にどう変わっているのか。Creator Connectで紹介された最近のイベントを振り返ると、その輪郭が見えてきます。
「アドビアプリ自動化もくもく会」では、参加者がそれぞれの自動化ネタを持ち寄り、LT形式で共有する文化が定着してきました。興味深いのは、AIによる自動化の話題が増えたことで、「完成品の発表」より「試行錯誤のプロセスそのもの」がコンテンツとして場を温めている点です。「うまくいかなかった」「ここで詰まった」というシェアが、次の参加者の挑戦を後押ししている。
また「江戸クリ×アドビアプリ自動化もくもく会」のように、異なるコミュニティがクロスする企画も増えています。AIや自動化が共通言語になることで、これまで交わらなかった分野の人たちが同じテーブルで議論できるようになった。コミュニティ運営者の仕事は、登壇者をブッキングする役割から、「クロスポイントを設計する」役割へとシフトしているように感じます。
■ 効率化の先で、結局問われるのは「人らしさ」
一方で、気をつけたいこともあります。AIで効率化が進むほど、コミュニティ全体が「自動投稿の集合体」に見えてしまうリスクです。告知文も、レポートも、サムネイルもAIで作れてしまう時代だからこそ、誰がどんな思いで発信しているのかが、参加するかどうかの判断軸になっていく。
ACLCのリーダーたちと話していて改めて感じるのは、結局のところ「あの人がいるから行く」という関係性こそが、コミュニティの土台だということ。AIは確実に時間を生み出してくれますが、その生まれた時間を「人と直接会話する」ことに振り向けられるかどうか。これからのリーダーに問われるのは、ツールの使いこなしよりも、その姿勢なのかもしれません。
次回は視点を変えて、コミュニティに「参加する側」の体験がAIでどう変わっているのかを取り上げる予定です。引き続きご一緒に、新しいつながりの形を探っていきましょう。
【参照記事】
三枝 祐介『【イベントレポート】アドビアプリ自動化もくもく会08|多種多様なLTが炸裂!最新の自動化・開発事情をキャッチアップ』Creator Connect, 2026/4/6
https://creatorconnect.jp/blog/adobe-app-automation-mokumoku-08-reportmasa『【イベントレポート】AIで拓くクリエイティブの未来─「江戸クリ×アドビアプリ自動化もくもく会」で見えたこれからのキャリア戦略』Creator Connect, 2026/4/2
https://creatorconnect.jp/blog/edocrea-25-ai-automation-report
【筆者プロフィール】
加藤 翼(Tsubasa Kato)
株式会社qutori CEO / 株式会社ロフトワーク シニアディレクター / BUFFコミュニティマネージャーの学校 創設代表
1990年千葉県柏市出身。「共創」をテーマにしたコミュニティディレクターとして、他分野のコミュニティを横断する事業を多数手がける。早稲田大学で哲学を専攻後、外資系コンサルなどを経て株式会社ロフトワークに入社。100BANCH / SHIBUYA QWS等の立ち上げに携わる。2017年 株式会社qutoriを創業。 https://x.com/2_basa
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